渡れぬ海峡の崖っぷちのつれづれ
海外に出なくなってもう久しく、パスポートもとっくに期限切れ。
かつて藤原新也が何かでパスパートの更新をするのを忘れ、切れてしまったとその迂闊を失笑してたことがあった丁度その時、当方も自らの更新の失念を自嘲していて、渡航の予定は皆無だったもののスワッ入用となった場合もありえようかとあらためて取り直すつもりいたはずが・・・。
当時旅先で知遇をえた幾人か、当時出遭うパッカーの三人に一人が藤原新也か沢木耕太郎を自ら決め込んでたものだが ──とりわけ一眼レフを手にした第二、第三の新也に成りおおせようとの野望をこれ見よがしな青年達が多かった── 、その中の何人かは既に本物のプロの写真家で、彼等はその後も海外に赴き続けているようだった。普通のパッカーだった者達はといえば、帰国後、なかなかに時間と金の問題で渡航には踏み切れず、もっぱら国内の旅で溜飲を下げるぐらい。
当方なんて、やっと大泉黒石がらみで長崎がいいとこ。
黒石の頃ですらもはや横浜や門司港にお株を奪われ凋落の一途と、作中で嘆いていたくらいに、観光の看板はずすともはや単なる地方の小港湾都市にすぎなくなってしまった観のある長崎。百メートルあるかないかの中華街を尻目に、黒石の作品のあれこれの背景舞台を念頭にその痕跡と残り香を求めての遊行のはずが、即物的に短時間というリミッター故にそれもままならず、昨今のトロピカル暑熱に晒されながらのそそくさ行。
近世以来のコスモポリタン港湾都市故に、ポルトガル・オランダ・中国・ロシア等の遺跡や残り香が、原爆によって焼き払われた残滓から辛うじて覗えるばかりであっても、切支丹以来の歴史の重みが、そこはかとなくリアリティーをもって漂って来る。
かつて当方がパッカー旅をしていた頃、戦後途絶えていたのだろう長崎~上海の海上航路が再開し、カジノ付き客船が稼働したことがあった。カジノってのが余りに俗的で、そんな客ばかり乗ってくるのかと些かうんざりしながらも一度は乗ってみようと、旅の帰途、上海の関係オフィスを訪れてみたら、運休中とあって愕然としてしまった。それから大部年月が過って、今度はハウステンボスが運営することとなって再開したらしいが、やっぱし短期間で運休になったという。戦前はともかく、戦後の長崎じゃ、もはやカジノ付きであっても集客は見込めなくなってしまったのだろう。
もはや定期海外航路のなくなってしまった長崎港は、もっぱら大型クルーズ客船の寄港地となっていて、今年正月に上海を出航した初の中国国産大型客船の鳴り物入りの《 アドラ・マジックシティー 》( 愛達・魔都号 135,000トン )が四日に入港した。翌日には博多港到着らしい。
それでも日程表見ると頻繁に長崎には寄るらしい。あんな大型でその都度の集客が見込まれるのだろうか、と他人事ながら疑問に思ってしまう。以前、長崎港で見た、マレーシア国籍の大型客船《 Virgo 處女星號 》も結構大きかったが、13階建の75,000トン。魔都号の半分ぐらいに過ぎない。
かつて戦前遙か、その長崎のお株を奪ったはずの門司港はといえば、もう凋落の一途。単純に港湾としてならまだそこそこらしいが、“ 繁栄 ”の金看板はとっくに朽ち果て、ひたすら高齢化と少子化ですっかり全国標準過疎タウンの銀看板がひっそりと佇むばかり。第三セクター的観光の喧しさと不可融に、シュールなまでにおどろおどろしくゆらめいている。
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