空蝉の夏
今年はじめてプリメリアの苗を植えてみた。
カンボジアの寺院の庭先で、白地に黄の混じった鮮やかな花々がしっとりと咲き誇っていたその静かな佇まいは独特のものがあって、何とか自宅の庭先にも是非一本植えてみたいものだと、長年の懸案だったのが、今初夏、ようやく苗木を植えるに至った。
鉢植えは趣味じゃないので、狭い庭角に植えてみたのだけど、存外、適当にしか面倒みないのに、何たってすっかりトロピカル化した列島であってみれば、申し訳程度に先端についていた葉芽もすくすく育ち、大きな枇杷風の葉となってそれらしい姿にはなってきた。
花は来年以降なんだろうが、如何にもトロピカルな佇まいはなかなかのもの。
人影が途絶えて久しい隣家の庭もアベノミクスとトロピカル化で、いよいよ鬱蒼とした葉叢となり、奥の伸びた樹枝に小さな青い実が鈴なりなって、秋になると真っ赤に色づき、小鳥たちの餌になるって生態的リズム。
ふと、手前の別種の大きな緑葉の上に、茶色い蝉の抜殻がひとつ。
毎年何個か見つけるけど、翌日には、珍しく同じ葉の裏側にも、泥塗れの抜殻がひとつ貼りついていた。
ネットで調べてももうさっぱり。
只、泥塗れの抜殻はニイニイ蝉ってのが相場らしい。
ニイニイ蝉は小柄で、どうもこの泥抜殻とは異なるようだ。それ以外の蝉も、地面の状態が雨上がりだったりしてぬかるんでると、ぬかるみの泥土に塗れたまま枝葉までゆっくりと這い上って来るという。
蝉は蝶と同様成虫となってから飛び立つと一月前後の命という。
蝉は夏場に枯木の幹なんかに卵を産みつけ、翌年の梅雨頃、幼虫となり地面まで降り潜って根っこから樹液を吸って大きくなる。そして、夏頃、再び幹を昇り樹枝や葉にしがみついて羽化・脱皮するというサイクル。地中で生活する期間は種類によって違いがあり、日本列島の蝉だと、三年~五年ぐらいってところらしい。
ところが、周期蝉( 素数蝉 )と云われる種は、きっかり13年または17年だけ生きる。勿論その長い間、樹液等を吸いながらずっと地中に隠れている。只、彼等の場合、集団で巣くっているいるようで、同じ木の地中に数万匹も幼虫が身を潜めているとのこと。但し、米国だけに生存しているという。
その米国じゃ、今夏、その13年と17年蝉がダブル羽化する年で、その数一兆匹。you tubeで、その米国のダブル羽化の様子が見たけど、そのエリア内はやはり相当騒さいらしい。けど、特定の州、それも特定のエリアの限られた木々のある場所って訳で、米国中のどこもかしこもで一斉に素数蝉の騒鳴が始まるってんじゃないようだ。それでも、一本の木肌に羽化した無数の蝉が貼りついている光景って蝗の襲来を想起させる。二百数十年振りの現象ってところで、いよいよきな臭く権謀術数底無しの世相にこじつけて終末論的符丁とする輩も跋扈しかねない昨今ではある。
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