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2024年9月24日 (火)

果てなき悲惨の相克劇 ピンジャル  映画ビデオ・ジャケット (1)

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 最近でこそ先ず買わなくなった映画ビデオ、以前は日本列島の南西辺境州という場所柄、いやでも観たいアジア映画は、自ら身銭をきって購入するしか手がなかった故に、ネットで捜して取り寄せたものだった。
 当時、怪しげにしか思えなかった遠い海外のネット・ショップ、そのちょっと前に一度、米国製のタクティカル・シューティング・ゲームを安かったから駄目もとでアクセスし手続きしたら、ちゃんと届いたので、必ずしも、海外=詐欺サイトって訳でもないのが分かってはいた。

 

 が、何しろインド、当のネット・ショップ自体はまともでも、途中が、よく郵便物でトラブルのは、パッカー世界じゃ周知の事柄。どうにも猜疑の念がもたげてしまう。幾度も二の足を踏んだものの、それじゃ埒あかず、何しろインド価格、一万円くらいで幾点もオーダーできるのもあって、とりあえずアクセスしてみたら、暫く過って、ちゃんと小包で届いた。
 その後、幾回か、二種のネット・ショップに注文したけど、一回だけ届かなかっただけで、あとは問題なかった。尤も、てっきりインド直と決め込んでいたら、在米のインド系のネット・ショップらしかった。
 もう、十七、八年以上も前のエピソードだ。
 現在はどうなんだろう。

 

 

 日本で売られている普通の映画ビデオと同じ簡単なものから、両開きの上に小さなパンフレットまで封入されてる些か豪華なものまで、インド価格で手に入るので得といえばそうなんだけど、英語の字幕はあっても日本語の字幕がないって点で、割り引かされてしまう。それでも、インドはビデオになるのが早いので、尚更、お得感はあった。

 

 

 最初の頃、インドや中国なんかとは、規格化されているリージョンが異なり、日本製のPCビデオ・プレーヤーじゃ、数回まで再生可能だけど、以降はその最後の異なるリージョンのものしか再生できなくなってしまうので、基本不可。
 でも、当時、異なるリージョンのものでも普通に再生できるリージョン外しの専用ソフトがあって、問題なく観れてはいた。
 只、その内、オール・リージョンって規格が普通になってきて、普通のプレーヤーでも観れるようになった。
 因みに、インドは基本PALだけど、PCパソコンのDVDドライバーじゃ関係なく再生できる。ALL REGIONS と一緒にNTSCというロゴも並ぶようになった。日本や北米でのテレビ規格で、元はインド映画ビデオではあっても、在米インド人たち向けビデオなら、当然NTSC規格って訳で、それが当方に送られて来たってことなのかも知れない。

 

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 ( 右側の扉。PINJARとは鳥籠の意味。ラシッドに囚われ幽閉されたプーローの意でもあり、それを周りから強いられたラシッドやもはや自分の家族の元にも戻れなくなったプーロー、そしてそれを強いた父親たちの意でもあるようだ。英国植民地主義から独立して早70年以上も過つけど、状況はさして変わらない。)

 

 シャールーク・カーンが全盛で、《 ディル・セ 》や《 ヴェール・ザーラ 》、《 サワデス 》、インド・ニューデリーのコンノートで観たバッチャンの《 フム 》、アジェイ・デヴガーンの《 カンパニー 》《 アパハラン 》等皆面白くて何度も観、元は十分に取れたってところで、日本映画はいよいよ観なくなり、映画館で観るのはほとんど洋物ばかり。尤も、コロナ禍以降まったく劇場には足を運ぶことはなくなった。
 インドは、中東とも東南アジアとも相違して、独特の色濃い独特の歴史と文化の芳香と闇に包まれた世界で、戦後、インド独立時の、それに一日先立って独立宣言したパキスタンとの、いわゆる印パ独立分離=パーティション問題、つまりヒンドゥー・イスラム=コミュナル紛争・軋轢が現在でも、多くの被害者を出しながら続いている。

 

 そんなヒンドゥー・イスラム=コミュナル紛争を、テーマあるいは舞台にした2003年の作品に、《 ピンジャル 》PINJAL( 2003年 )があって、中々に面白く、インド・パキスタン的メンタリティー的愛憎劇ともいえる秀作。
 インドを旅してると種々様々なトラブルに遭遇する。
 インドそのものともいえるカーストに根差したものから、宗教的コミュナル紛争あるいは民族的紛争etc
 ニューデリーのパハールガンジのシーク親爺の(エヴァ)グリーン ・ホテルをチェック・アウトし、バナラシ―に到着して幾らもしない内に、宗教がらみだったかニューデリーで爆破事件があって、一帯夜間外出禁止令が出てたり、何処に滞在中だったか忘れたが、アヨデヤでヒンディー原理主義者たちが大挙して、かって建っていたヒンドゥーのラーマ寺院をイスラム王朝が破壊して建てたといわれるバーブリー・マスジッド・モスクを粉々に破壊してしまったニュースを聞いたり。

 

 
 印パ分離独立直前の1946年のパンジャブーー独立後はインド・パキスタン両国に二分され、それぞれパンジャブ州を名乗るーーで、ある旧家の婚約済みの娘プーローが、突然イスラム教徒のラシッドに誘拐される。ラシッドはもともと彼女とは係わりはなかったものの惹かれていたのを、プーローの親に恨みを抱いていた父親が彼に有無を言わせず強いたのだった。最初から、まったく意に染まぬ、どころか屈辱と恥辱に塗れたラシッドだった。
 が、閉じ込められたラシッドの家で泣くばかりのプーロー、そこを脱出を試みる。深夜、やっとのこと自宅に辿り着いてみると、何と父親は厳として帰宅を認めなかった。封建主義的モラル全盛の時代だった。家の名折れってことで、もはや彼女は死んだ者として扱われていた。泣く泣く、元来た路をプーローは戻ってゆく他なかった。

 

 やがて、印パ独立で、プーローの実家の邸も、イスラム・パキスタン領となり、難民となってヒンドゥー・インド領に移住を余儀なくされてしまう最中、プーローと元の婚約者ラームチャンドが再開する成り行きになる。ラシッドも一緒についてきたのだが、二人の親密さを目の当たりにして、ラシッドは一人その場を去ってゆく。インド領に引き上げてゆく最後のトラックの出発の時間がせまり、プーローがふと見ると、ラシッドの姿が見えず、その意味を悟ったプーロー、後ろ髪を引かれながらも、その場に至るために奔走してくれたラシッドを探し求める。と、通りの影に一人ポツンと坐し悲嘆にくれたラシッドの姿を見つける。ラームチャンド一行は、悶々たる想いを抱きながらも、二人の絆のほどに思いをいたす他なく、インド領に向かうトラックに乗り込む。

 

 

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 ( 片側の扉の中に収められていた16ページのパンフというよりリーフレット。)

 

 プーローがラームチャンドと一緒にインドへ戻る、って予定調和を、当時の、否、インド・パキスタンじゃ、現在でも、色んな事件を鑑みるにつけ、そう変わりがないようにも思えるほどに、閉鎖的な封建主義的規制・メンタリティーがそれぞれの社会のエスタブリッシュメントとして機能し、父親が我娘プーローの帰還を拒絶したように、彼女も正に封建主義的共同体的紐帯・価値観の呪縛から逃れ解放される方途を自ら放棄し、元の略奪婚的紐帯に戻ってゆく。
 つまり、インド・パキスタン的エスタブリッシュメントからの予定調和は、むしろ束縛からの解放・自由意志的な方途を拒み、ラシッドの元に戻る方途にあったというべきか。
 尤も、この映画、パキスタンでの撮影もしたようで、インド・パキスタン的宥和を目しているならば、ラシッド(=イスラム=パキスタン)側を貶めかねない、呪縛者からの解放とばかりのラームチャンドと伴に、念願の婚約→結婚へとインド領に戻るトラックに乗るってシナリオは、そもそもあり得ないのだろう。

 

 
 この映画好きなインド映画の一つだけど、ラシッドを演じたマノージュ・バジパイが見物だろう。一般的評価も、彼に尽きているようだ。
 ふだんは風貌からして悪役専門。僕の好きな悪役専門のアムリス・ブリーやナナ・パーテカルたち同様に、なかなか渋い演技と雰囲気をもっている。

 

 いや、今回は、映画ビデオのジャケット・ケースの紹介をテーマにする予定だったのに、映画そのものに言及してしまった。
 この《 ピンジャル 》は、以前は二枚持っていて、最初に買ったDVDは普通の廉価版だったが、二枚目のは両開き三面の、片側にリーフレットが入った豪華版。残念ながら、造りがお粗末なのかほころび始めている。けど、考えて見たらもう発売になって二十年近くなる。なら、十分にありえる事態。とはいえ、他の同じような時期に買ったDVD、皆問題なく昔のままちゃんとしている・・・

 

 映画はここで終わっているけど、実際は、むしろここからが本当の鮮血と叫喚の惨劇のはじまりで、プーローの兄弟やラームチャンドの乗ったトラックもその一台に過ぎないインド領へ向かうトラック、あるいは列車が、それと逆方向、つまりパキスタン領に移動を余儀なくされたインドからのイスラム教満載にしたトラックと鉢合わせし、互いに憎悪と多年の憤懣を爆発させ、男女の別なく手にした刀や包丁・鉈をふりまわす血で血を争う一大惨劇が繰り広げることになる。あるいは地元のパキ領のイスラムが、インド領のヒンディーが、やってきた敵対バスを襲撃したり。      ラームチャンド一行の方が、かえって惨憺たる、それこそ死線を越えるバス行となってまうところまでは、さすがに描かれてはいない。勿論、その惨劇は史実であり、映画のラームチャンド一行の帰趨迄は詳らかじゃない。無事、インドならアムリートサルに辿りつけることを祈るのみ。

 

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