プノンペンの雨季 旅先のポストカード
初めてカンボジア・プノンペンに旅した30年前頃とは、さすがにもう街並みも人々の生活様態も随分変わったろうが、当時は、まだ郊外なんかにはポル・ポト派の影が残っていて、夜間、定宿の《 キャピトル2 》ホテル近辺でも時折車両対する検問なんかもあったようだ。以前にも記したが、深夜、寝静まったホテルの前に止まった乗用車の両側に、一人はM16、もう一人はピストルを運転席に向けたまま私服ポリスが何か大声で叫んでいて、今にも運転席に銃弾を撃ち込みかねない勢い。乗用車の中からは、女の大きな泣き叫び声が響き渡り、反対側やや後方に立ったポリス、急に乗用車の進行方向の上空に向けM16を連射。暗闇の中で銃のチェンバーからすら火花が散るのが鮮やかに見てとれたのが印象的だった。深夜に自動小銃をぶっぱなすなんざ、さすがプノンペン。一層、女の叫び声が大きくなって、ピストルをかまえたポリスが指差す進行方向に、やがて乗用車はノロノロと動き始めた。
銃声と女の泣き叫び声で目を覚まし、慌ててベランダに、念のために這って出たのだから、ひょっとして、最初の銃声の際、運転手が撃たれていたのかも知れない。乗用車は真っ暗な大通りをノロノロと進み続けた。瀕死の状態で、辛うじてハンドルを握っていたのだろうか。まさか、エンジン・トラブルやガス欠じゃあるまい。そんなことで、両側から銃口向けられ、怒鳴り散らされたりしたらたまったもんじゃない。ポルポト派への恐怖がポリス達を必要以上にナーヴァス且つ攻撃的な方途に走らせた・・・時代が少し下ると、今度は、フンセン派とラナリット派の抗争が始まり、《 キャピトル2 》の前の道路には、戦車が轟音を立てて通ってゆく。夜空には、ラナリット派の拠点に向け、鮮やかな弧を描いて飛んでゆく曳光弾。
そんなきな臭い政治がらみの世相であっても、雨季ともなると、プノンペンの通りはぬかるみ、冠水し、商店街によっては乗用車が通る毎にその波が打ち寄せるって始末。すべてがノロノロと、当時はまだまだデコボコだらけの道路が多かったプノンペンの道路事情であってみれば、乗用車もバイク・タクシーもシクロ( 人力車 : 運転席が後ろに付いている )も、手探り状態で、底の見えない泥水の海を渡ってゆく。
どんな状況でも楽しみ遊びたがる子供達。
後ろを大人を満載したシクロが通り、背後に、セントラル・マーケットの独特のドームが佇んでいる。
丁度バックパッカー達が集まりはじめた頃。
やがて隣国タイ人のパッカーが現れるようになり、しばらくして、今度は昔から仲が良くはなかったらしい、クメール・シャム、カンボジア・タイの間で衝突が起こる事態に。
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